人と大地の躍動編

ブラジル、リオデジャネイロ

リオのカーニバル

リオのカーニバルはチケットを購入することが大変だった。私達はサンパウロからリオのカーニバルチケットを買おうとしていたのだが、取り扱っている旅行会社が非常に少なく、あったとしても非常に高額だった。

サンパウロでチケットを購入しようとしたのには訳がある。カーニバル期間中はリオのホテルが異常な値上げをしていて、最低一週間は泊まらないと宿泊できないようにしているところがほとんどだったからだ。少なくともインターネットから予約できるホテルについては、全てがそういう状態だった。色々な人々の情報によると、何とか泊まるという状態の宿であれば、そんなに高くない宿を見つけることもできるらしい。しかし、私達はカーニバルを目の前にホテル探しをするよりも、日帰りでリオのカーニバルを見に行くことを選択した。サンパウロからリオまでは長距離バスで6〜8時間。当日の朝、バスでリオへ出発し、カーニバル終了後の朝、同じバスでサンパウロまで帰って来ることは充分可能だ。

数年前の情報では、サンパウロから日帰りバスツアーというものがあったらしい。だが今はもうやっておらず、その旅行会社ではチケットの販売もやっていないとのこと。ある旅行者では9番セクターのチケットが約55,000円だと言う。9番セクターとは観光客専用のセクターで、場所的にはそんなに悪くないのだがどうしても高額になってしまうセクターだ。想像していた通り、この値段はあまりにも高すぎだ。

リオのカーニバルはサンパウロのカーニバルと同じように特設会場にてパレードを行なう形式だ。観客席も同じようにセクター毎に区切られた席でパレードを見ることになる。一般的に購入できるセクターは、1,3,5,6,7,9,11番セクターのチケットだ。そしてこの中である程度まともにパレードが見ることができるのは、3番、5番、7番、9番のセクターだけ。1番セクターはパレードが始まる部分の為、パレードの背ばかり見ることになる。6番と11番セクターは後ろに奥まった席になり、チケット代も安く手に入りやすい。しかしとてもまともにパレードが見れるとは思えない席で、わざわざリオまで高い交通費を払い、カーニバルの為に旅の日程を調整してまで来ておきながら、チケット代を出し惜しんであまりカーニバルを楽しめないのは、後悔しか残らないと思った。

日本語が通じるプリンス旅行社という旅行会社に状況を説明し、3番、5番、7番セクターを手配できる方法はないか確認してもらうことにした。サンパウロでリオのカーニバルのチケットが手配できれば、リオへチケットの手配をしに行かなければいけない状態が避けられるので、交通費や手間を考えるとメリットはとても大きい。そして待つこと数日、プリンス旅行社の方がリオの旅行社に色々と確認して手配してくれた結果、リオのコパガパーナから送迎がついた3番セクターのチケットを約27,000円で購入することができた。こうなればリオに泊まらずカーニバルを見る計画を実行に移す準備が整ったということだ。私達はすぐにチエテ長距離バスターミナルへリオ行きバスの予約手配に向かった。

当日は、朝8時頃のバスにてリオへ出発。バスに乗り込む際、パスポートのチェックがあり、パスポートのコピーで乗車させてもらう。そういえばブラジルではパスポートの携帯が義務付けられていることを思い出した。バスに乗り約7時間程でリオのバスターミナルに着く。そこから一番近い駅へタクシーで連れて行ってもらうと、駅の近くは通行止めで車が入れないとタクシーの運転手は言う。仕方なく500m程の距離を歩いたのだが、その道には見るからに貧困層の人々がたむろしていた。そんな道をどきどきしながら早歩きで通り抜け、駅から集合場所のコパガパーナへ向かった。

集合時間よりもかなり早く集合場所に着いた私達は、コパガパーナのビーチを見てみることにした。しかし、私達はカーニバル態勢で水着やビーチサンダルを持ってきていない。みんな水着で開放的な浜辺を謳歌している中に、普通の服装はあまりにも目立ち過ぎた。結局私達は、ビーチの雰囲気を少し楽しむだけにして、少し遅い昼食を取り、早々にビーチから退散した。

カーニバル行き送迎の待ち合わせ場所に行くと、もう参加者達が集まっていて、添乗員が点呼を行なった後、すぐにバスに乗り込んでカーニバル会場へバスで向かった。道中、海に浮かぶポンジアスーカルやイパネマビーチを通って会場へ着くと、他の参加者達は入場券をバックの中から取り出して入場ゲートに入って行く。私達は入場券を添乗員からもらう手筈になっていたので、添乗員に入場券を催促する。すると添乗員は、私達の入場券を持っていないと言う。どこかで手違いがあったのだろうか。ここまで来ておいて会場に入れなかったら嫌だなぁ。

事情を添乗員に説明したところ、添乗員は旅行会社に確認をしてくれて状況が確認できたとのこと、他の添乗員が会場へ来る際に入場券を持ってきてくれる手筈となった。そして待つこと約1時間半後、入場券が届けられ、私達は無事入場することができた。

入場できるまでの1時間半は長かったのだが、その間様々な人が会場へ入って行く様子を見ることができて、なかなか面白かった。入場する人のほとんどは欧米人で地元ブラジル人らしき人達はあまり見当たらない。そんな中にはどう見ても観光客なのに大きくて背の高い鳥の被り物を身に付けている一団がいた。そんな格好でカーニバルを見ていたら後の観客がパレードを見れないだろうと思っていたら、その被り物をつけた一団は後でパレードそのものに参加していた。おそらく素人が参加出来るツアーが存在していたのだろう。お金に余裕があるなら入ってみたいちょっとうらやましいツアーだ。会場のまわりには大声を張り上げて会場で座る為のクッションを売ろうとする人達や、おみやげ物等を売ろうとする人達、そして目的不明の人達が溢れていて、このお祭り騒ぎに乗じてひと稼ぎしようとする人々の思念をとても多く感じたのだが、入場口付近はセキュリティーがしっかりしており、そういう人達が入れないようになっているので、落ち着いてその様子を観察することができた。

会場に入るとその大きさにと人の多さに圧倒される。サンパウロのカーニバル会場よりも更に長く大きい。当然パレードに程近い前列側の席は超満員で入れそうになく、添乗員に連れられて一番上の席から見ることになった。サンパウロでは観客席はパレードの片側だけだったのだが、リオの観客席は両側に設置されていて、私達のいる観客席と逆側は個室のようなブースになっているところもあり、とても高そうな特別な場所になっている

そんな様子を観察しながら、自分達の席を確保すると、パレード開始まではまだしばらくの時間があるようだ。だが熱気はものすごく、Tシャツ一枚でも暑い。そしてとても喉が渇く。持参した500mlのペットボトルはすぐになくなり、たまにまわってくる売り子さんから何度も水を買うことになった。

三日間続くこのカーニバルは、一日に数チームがパレードを行なうことになる。そして1チームのパレードは、約1時間半程度続き、夜の9時から始まる各チームのパレードは、延々と続き、全てのパレードが終わる頃には明け方になるとのことだ。

突然会場に花火が鳴り響く。その大音響に観客達は大騒ぎ。カーニバルの始まりだ。自由にサンバステップを踏みながら踊るパシスタと呼ばれる踊り子が先頭を切って現われる。そして会場のスタートラインまでバテリアと呼ばれる楽器隊に引き連れられた一団が続々と進み出てくる

バテリアの強烈な打楽器音が大音響でパレードのサンバを奏で始めるとパレードの始まりだ。まずはバテリアがスタートラインに程近い一角に入って行って留まる。パレードの中腹あたりで留まっていたサンパウロのカーニバルとは、会場の造りもパレードの形式も少しだけ違うようだ。続いて巨大な山車とその上に乗る人々、そしてその周りを踊り歩く人々がどんどん現われて行進が行なわれて行く。

カーニバルとはみんながサンバを踊りながら行進をするものだと思っていたのだが、実際には少し違っていてもっと演劇のようなものに近い。チーム毎にそれぞれ設けたテーマに沿って作られた山車やコスチュームそして音楽を演出したパフォーマンスのようなものだ。実際パレードの中でサンバを踊っている人は少なく、それぞれのパフォーマンスを行うことがメインにあり、その上で歌い踊るという感じだ。映像などではパシスタの過激な衣装や激しいサンバステップばかり取り沙汰されるが、カーニバル全体としては、もっとスケールが大きく、大人数で大真面目に行なわれる大々的な行進。そのパレードは、体全体に響くバテリアのリズムと行進する人々の情熱的なパワーで、見ている者を圧倒する

前のチームがパレードを終えるまで、次のチームはパレードを始めることはない。パレードとパレードの間には、行進会場の掃除が入り、ほうきを持ったお兄さんまでサンバを踊りながら掃除をする。この時だけ観客はみな座って休憩しトイレや会場裏で売っているハンバーガーやビールを買いに行くのだが、それ以外の時間はずっと立ちっぱなしでパレードを見ることになる。そんなパレードは、スタートから約8時間後の明け方5時頃に終了した。たまにパフォーマンスが単調で見ていて面白くないチームもあるにはあったのだが、それでも約8時間を見続けたにも関わらず、見飽きてしまうようなことはなかった

カーニバルが終わり、添乗員の誘導で会場を後にする時、さっきまでの熱気がうそのように消え、さわやかな風が通り過ぎる。会場の周りはまだざわざわとした喧騒にまみれているが、消えゆくお祭りの雰囲気に少し寂しさを感じながら、私達は会場を後にした

バスで集合場所のコパガパーナまで連れてきてもらった時には、まだあたりは薄暗く、街を歩く気にはなれなかった。私達は添乗員に長距離バス行きのローカルバス乗り場を教えてもらいそのローカルバスに乗り込んだ。

長距離バスに向かう途中、朝焼けに映えるポンジアスーカルやビーチをぼんやりしながら眺めていた。カーニバルの興奮は冷め、ほどよい充実感に浸りながらバスに乗っていた。もうそろそろ長距離バスターミナルだ。そう思い隣りの乗客に「バスターミナルはどこ?」と聞いてみると今のところじゃないかなとの答え。慌ててバスを降りるとそこはセントラルステーション。まだ降りる場所ではなかったのだ。

しまった…。

それにしてもここは異臭が漂いとても雰囲気がよくない。急いでバス停でないところで降ろしてもらった為、バス停がどこにあるかもわからず、通るバスを注意深く見て止めるべきバスを待つ。そして約30分後、ようやくバスに乗り込み長距離バスターミナルに着いた。

バスターミナルで時計を見ると、まだ7時半。予約していた帰りのバスまで3時間はある。疲労と寝不足でどうしても、うとうとしてしまう。ここで寝てしまうことは無防備この上ないので、仕方なくバスターミナル2階の怪しい人が入ってこないような待合室でうとうととバスを待った。

そうして帰りのバスに乗り込むとサンパウロに着くまでの約7時間、深く眠りについた。

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真実は小説より奇なり。

マーク・トウェイン

最終更新日 : 2007-08-04サイトマップ連絡先 | © 2006 Travel Around the World in 18 Months.