人と大地の躍動編

ボリビア、ティワナク

大合唱

プーノまで帰るバスが残っているか心配になる。みんなが帰る時間に合わせて帰らないとプーノまで辿り着けないかも知れない。最後の遺跡を早足で見終わると、すぐに国境までのバスが通る幹線道路へ向かった

そこにはバスを待つ地元の人々が数人残っている。よかった。まだ大丈夫そうだ。

子供達が3人ニヤニヤしながらこちらを見たり隠れたりしている。男の子二人と女の子一人、そしてお父さんと一緒にここまで来ているようだ。どうやら東洋人が気になるようだ。またかという気持ちを抑えてこちらから声を掛けてみる。

「オラ!」

やっぱり子供らしく、恥ずかしさを紛らわすようにみんなでクスクス笑った後に挨拶をかえしてきた。

彼らもペルーとの国境方面に行くのだが、途中の村で降りるらしい。あまり言葉が通じない中でも、意外と子供との会話はなぜか進む。言葉が通じない中においてもあまり気にせず話せるからだろうか、話していてもなんとなく気が楽だ。

話しながら待つこと30分。ペルー国境方面行きのバスが来たのだが、彼らが乗るといっぱいで乗れないとのこと。仕方なくそのまま待つことになる

ここのバス停はなく、バスが通った時に運転手にわかるように手を挙げないといけない。しかもそのバスというのは普通のワゴン車なので、一般の車と区別がつかない。結果、バスらしき車が通る度に手をあげることになる。

待つこと更に30分ようやくバスが来た。今回のバスはワゴン車ではなく大型のバスだった。乗務員らしき人に行き先を告げると「乗れ乗れ」と手を動かす。既にほとんど満員状態のバスは通路まで立っている人でいっぱいだ。入口近くで何とか車内の支柱につかまって立つ。車内は全員地元の人らしい風貌で、もちろん東洋人は自分一人だけだった。

近くのおばちゃんが物珍しそうに私を見ている。このままだと国境までずっと見続けられるかも知れないので、思い切って声をかけてみた。

「ブエナスタルデス」

するとせきをきったように質問攻めが始まった。

「あなたはどこから来たの?」「名前はなんていうの?」

好奇心いっぱいだが、とてもにこやかに質問をするとてもいい感じの人だった。

おばちゃんの子供達はにこにこしながら手で目を細く延ばして見せる。私も対抗して「おまえの目は大きいな」と言うと、恥ずかしがっておばちゃんの後ろに隠れた。

おばちゃんと話していると、その隣りのおばちゃん。またその隣りのおばちゃんが話しに入ってきて、いつの間にかその輪がバスの前側半分ぐらいになってしまう。拙いスペイン語でなんとか会話を続けているのだが、段々と知らない単語がいっぱい出てきて話がよくわからなくなってしまう。そんな時おばちゃんの子供が「これ知ってる?」とペルーのサッカークラブのユニフォームを見せてくれた。「有名なの?」と聞くと、おばちゃんもこれはペルーのナショナルチームでみんな知ってるよと教えてくれた。そしてそのままサッカー応援歌を誰かが歌い始め、あっという間にバスの中で大合唱が始まった。

おばちゃんの子供は一生懸命歌詞を教えてくれる。適当ながらもなんとかあわせて歌い、そして笑った。

ペルーとの国境まで着くと、みんなはばらばらに帰りはじめる。おばちゃんたちとその近くにいた人達は、私のことを「アミーゴ」と呼んでくれて最後には抱き合ってさよならした。ペルーは忘れられない人達が住んでいる国だ。

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真実は小説より奇なり。

マーク・トウェイン

最終更新日 : 2007-12-17サイトマップ連絡先 | © 2006 Travel Around the World in 18 Months.